野鳥フォトコンテスト2025 結果発表
応募

審査員講評

写真家 山田 芳文さん

たくさんのご応募ありがとうございました。候補作品を選出した後、そこから絞りきるのに非常に時間がかかりました。候補作品のレベルが拮抗していたからです。ほんの少しの差で選ぶことができなかった作品を撮影された人には申し訳なく思っています。

見る側視点で作品を無理矢理に4つに分類すると、
①誰が見ても何も言うことがないぐらい上手で、かついい写真、
②上手に撮れていないけれど、いい写真、
③上手に撮れているけれど、よくない写真、
④誰が見ても上手ではなく、かつダメな写真、
に分けることができます。
世の中に①は非常に少なく、もしかしたら世界中探しても数点しかないかもしれません。④も非常に少なく、これはカメラの進化により、撮影を失敗しにくくなったのが理由と思われます。で、世の中のほとんどを占める②と③なのですが、近年は②が減少して③が激増したように感じています。これはあまりよくない傾向だと思っていて、いろいろと思うところがあります。

そんなこともあって、前回のこのコンテストの選評でも「何が写っているか(鳥の種類)よりもどのように写っているか(写真の内容性)に重きをおいて審査」と書き、今回の応募コメントでも「綺麗な作品でも内容性が乏しければ、わぁ、きれいで終わってしまって、その後の余韻がありません」と書きました。それらの効果?からか、今回の応募作品の中には、上手でなくても撮った写真で何かを伝えようとしている(と思われる)作品、つまりは②のタイプの作品が増えました。これは、非常にいいことだと思っています。

いい写真を撮るためには鑑賞力、つまりは写真を読む力をつけることが大切だと思います。スマホを手に取っていつでもどこでもSNS上の写真や映像を気軽に見ることができる便利な時代になりましたが、スマホの小さな画面で見る「画像データ」では作品の良し悪しがほとんど何もわからないのも現実です。リアルの写真展などに足を運んで、良質な「写真」に触れ、作品を読む習慣をつけることをおすすめします。そうすることで、皆様の写真ライフがより豊かになり、野鳥の撮影もより楽しめるのではないでしょうか。

ゲスト審査員講評

写真家 蒼井 ゆいさん

今回のコンテストでは、決定的な瞬間を狙った作品から、構図や背景まで意識された作品まで、幅広いアプローチが見られました。共通の被写体を撮る中でも向き合い方はさまざまで、一枚一枚に撮影者の思いや意志が感じられ、とても楽しく拝見しました。それぞれが自分なりの視点で被写体と向き合っていたことが、写真から自然と伝わってきます。コンテストという場をきっかけに、今回選ばれた方も、惜しくも選ばれなかった方も、撮る瞬間や一枚を選ぶまでの時間の中で、写真と向き合う時間が普段より濃密になっていたら、これ以上嬉しいことはありません。

フォト部門

大賞 ソニーポイント 50,000 円分

審査員講評(山田 芳文さん)
見た瞬間に撮影場所がわかる写真は問題になることがあるので、セレクトしにくいのですが、この作品は例外として扱っていいと思いました。間違いなく、いい写真で、写真に内容性があるからです。いい写真は、写真を見た人が写っている前のシーンや次のシーンを想像することができるので、写真を見る(読む)時間が長くなります。また、野生の生き物や風景を撮っている人は、画面のなかに直線的なものを入れてフレーミングすることが上手ではない傾向がありますが、こちらの作品は直線を入れて画面をうまくさばいています。ほんの少し(←これ重要)傾いていることで、写真に動きが出ました。

山田 芳文賞 ソニーポイント 30,000 円分

審査員講評(山田 芳文さん)
野鳥の撮影でいちばん難しく、奥が深いのは、普通の鳥を普通にちゃんと撮ることです。これは僕の永遠のテーマでもあるのですが、これができている作品は、世の中にひとにぎりもなく、ひとつまみ程度というのが僕の体感です。で、こちらの作品、普通の鳥を普通にちゃんと撮られています。恐れ入りました。被写界深度の浅さではなくライティングで立体感が出ていること、ユリカモメの大きさと撮影距離とレンズの焦点距離といちばん遠い背景の関係が絶妙であること、撮影圧が大きくかかっていない(と思われる)ことでえられたであろう主役の向きと表情、などなど、いいところを言い出すときりがないほどです。素敵な作品を拝見できて、うれしく思います。

蒼井 ゆい賞 ソニーポイント 30,000 円分

審査員講評(蒼井 ゆいさん)
飛び立つ瞬間の力強さと、背景のやわらかなボケの組み合わせがとても印象に残りました。羽を広げた一瞬の動きがが的確に捉えられており、画面からは自然と躍動感が伝わってきます。ヤマガラのオレンジ色を引き立てるように背景の緑が効いており、色の関係も心地よく感じられました。被写体と背景の距離感も程よく保たれていて、視線が自然と主役に向かう点も印象的です。躍動感のある場面でありながら全体には落ち着きがあり、臨場感と画面のまとまりが両立した完成度の高い作品だと感じます。

αユーザー賞 ソニーポイント 30,000 円分 ※「α」で撮影された作品が審査対象。
「α」システムの性能や特徴が最大限活かされており、「これぞα」という1枚に与えられる賞です。

審査員講評(山田 芳文さん)
AFモンスター(と僕が勝手に呼んでいる)のα9 lllで撮影されたそうで、さすがにフォーカス、タイミング、ともにバッチリです。そして、この作品のいいところはチョウゲンボウの「らしさ」が出ているところです。らしさが出ているので、主役を黒く塗りつぶしてシルエットにしたとしても、野鳥を深く観察している人が見たら一瞬でチョウゲンボウとわかるのではないでしょうか。ライティングはフラット気味ではありますが、背景の緑に濃淡があり、左上にハイライトがあるので、いわゆる眠い写真になっていないところも良かったです。そして、何より、画面左真ん中やや下の葉っぱが非常に効いています。これによって、写っている前のシーンが想像することができ、作品が読み物として成立しています。

ムービー部門

ムービー部門賞 ソニーポイント 50,000 円分

審査員講評(山田 芳文さん)
候補作品の選出後、最終的に、こちらの作品と別の作品のふたつに絞って、どちらにするべきか悩みました。が、こちらの作品の作者の方が、①より深く観察している(であろうと思われる)ので、テーマを深く掘り下げることができている、②焦点距離に応じたレンズの基本的な使い方ができている(写歴が長いであろうことが容易に想像できます)、のふたつの理由から決定しました。鳥の上っ面をなぞっているだけの作品と対極にあり、テーマを深く追求しているので、作品にコクや深みがあり、説得力があります。

おすすめコンテンツ